今、日本国内ではITシステムや情報セキリュティに明るい人への需要が高まっています。
「え?今さら。もう遅いんじゃない?」
生活のデジタル化が進む中国で暮らす方はそう思うかもしれません。
でも、一度でも日本に行ったことのある方なら分かると思いますが、日本は中国ほどキャッシュレス化が進んでいませんよね。
日本から帰ってきたら、財布の中は大小のコインでいっぱいになっていませんか。
中国では当たり前の配車アプリやシェアサイクルも、まだまだ普及していません。
日本は中国と比べて確実に遅れています。
ここに来て情報人材のニーズが高まっている理由は2つあります。
ひとつはコロナ渦によってテレワークが普及したため。もうひとつは日本政府が行政手続きのデジタル化を促進しているためです。この2つの理由は、コロナ禍によって、日本人の生活・仕事スタイルが変わった事に起因しています。
コロナウィルスの流行が始まり、緊急事態宣言が発令された後、日本のほとんどの会社はテレワークを始めました。
しかし、ここで障壁となったのは日本独自の「ハンコ文化」。大事な契約書や決済書類にハンコを押すだけのために、危険を冒して出社する人が後を絶えませんでした。
首都圏のIT企業など約30社が参加する「TDMテレワーク実行委員会」によると、テレワークを行っていても、9割の会社では押印をするために出社を行っているという事実が明らかになっています。
「システムを使ってオンライン決済すればいいんじゃないの?」
と思うかもしれませんが、日本人にとってハンコを押すという行為は「責任と決心の現れ」と捉えられています。
日本人は家を買う時も、婚姻届を出す時もハンコを押します。でも、こういった公文書に「必ずハンコが必要」という法律はなく、署名だけでも法的効力が発生します。ハンコを押すのはひとつの儀式、もしくは気持ちの問題なのです。こうした習慣が残っていたため、社内システムのデジタル化が遅れていたのです。
これは民間だけでなく、行政においても同じです。
9月に就任したばかりの菅義偉首相は、早々に「デジタル化」を政策目標に掲げました。その一環として、各省庁に対して「脱はんこ」を指示しています。これを受け、東京都もハンコの原則廃止などを盛り込んだ「デジタル・トランスフォーメーション(数字化转型)」の方針を発表しました。将来はオンラインでの行政手続きをデジタル化し「バーチャル都庁(虚拟办事大厅)」を目指すとしています。
経済活動のグローバル化が進む現代において、業務の効率を高めなければ外国企業からそっぽを向かれることも考えられます。「IMD世界競争力センター」の発表によると、世界主要国63ヶ国・地域で、日本のデジタル競争力ランキングは23位に位置し、G7における生産性ランキングは最下位に甘んじています。今回の日本政府の方針はこういった状況を打破するためだと言えるでしょう。
社会が変わると働き方が変わり、働き方が変わると新しい職種へのニーズが生まれます。「脱はんこ」は氷山の一角であり、これに伴って様々なシステムの開発や統合が進められていきます。デジタル化を進めるこれからの日本では、IT人材に対するニーズが急激に高まっていくことでしょう。
コロナウィルスがもたらした生活・仕事スタイルの変化が、皮肉にも日本社会の非効率性を浮き彫りにしたのです。