この文章を読んでいる人は、中国語または日本語の履歴書を一度でも書いたことがあると思います。
より多くの情報を採用担当者に知ってもらうために、出来るだけ細かく、漏れがないように記入するのが当たり前になっていますが、国によっていくつかの項目は「書かない」ことが当たり前の場合もあります。また、あなたには想像もつかない事を書かされています。
今回は世界各国の履歴書を見てみましょう。
顔写真は要らない
アメリカやイギリス、オーストラリアの履歴書には写真を貼るスペースがありません。これは容姿による差別を避けるためです。様々な人種が混在する国ならではの習慣かと思うかもしれませんが、逆に日本や中国のように写真を貼る国の方が少ないようです。同じアジアでは韓国でも写真が必要です。
履歴書とはあくまでも仕事を探すための道具であり、容姿と能力は関係がないと思われているようです。
アメリカで一般的に使われている履歴書
顔写真を貼るスペースがない。
韓国の履歴書。フォーマットはほぼ統一。
線や枠でしっかり分けられているところが日本の履歴書に似ている。
生年月日、年齢、性別、国籍も書いてはいけない
上と同じような理由で、欧米の履歴書には生まれた年や年齢、性別、国籍を書かないことが多いです。アメリカには『反差別法』という労働に関する法律もあるくらいです。法律で縛られていますから、年齢や性別などを理由に採用を断った場合、訴訟に至るケースも多いようです。また面接の時にもこれらに関する質問をすることさえNGです。
中国や日本では、年齢や性別で待遇が変わってしまうこともしばしば。この点から考えると、欧米では自分のバックグラウンドに関係なく、平等に扱うということです。でも、面接官は話の内容や外観から推測しないといけないので、難しそうですが…。
欧米式はとにかく自己アピール
欧米の履歴書には客観的な情報が少ない代わり、自分の能力などを積極的にアピールしなければなりません。具体的には学校での成績や、なぜ自分がこの会社・ポストに相応しいかなどを簡潔かつ論理的に記述します。
またイギリスでは履歴書のテンプレートがありません。A4一枚に内容をまとめていればオッケーで、体裁も事由。ここで仕事能力とセンスが問われているのです。
そんなことまで?
借金があるかどうかまで書かされるメキシコ
かと思えば、なんとメキシコでは借金の有無や乗っている車のモデルまで書かされるそうです。正式には「雇用申込書(Solicitud de Empleo)」といって、統一のフォーマットに基づいているそうです。その記入事項の多さに驚き。なんと全部で77項目もあります!(日本の一般的な履歴書は30項目くらい)。
メキシコの雇用申込書。これは一部分。
それ以外に趣味や健康状態、家族構成、現在の収入、さらには「人生のゴール」も書かされるようです。
「面接なんかしなくてもいいんじゃない」と思ってしまう程、詳しく書かされます…。
日本の履歴書でも趣味を書く欄がありますが、これは応募者の人物像を知るためのもの。ただメキシコでは肥満体質の人が多いらしく、本人の趣味から健康状態を把握するという目的があります。
履歴書は国の姿の写し鏡
筆者(日本人)も初めて中国の履歴書を見た時は驚きました。「民族」を書く欄があったからです。私自身は自分が何民族であるかを意識したこともないし、定義されたこともないので、どうするか迷いました(書きようがないので、いつも空白にしています)。欧米式のルールに則ると、これも仕事能力には関係ないので、記入する必要はないと思われます。しかし、中国では民族によって補助政策があったり、利用する食堂が違ったりするので、明記する必要があるのでしょう。
実は最近、日本でも性別欄のない履歴書テンプレートが発売されようとしています。これはトランスジェンダーや性的マイノリティの人たちを配慮してのことです。ただし、今までの履歴書に慣れてきた人、特に採用側にとってみると不便かもしれないので、実際に普及するまでには時間がかかると言われています。
様々な肌の色と、様々な思想を持った人が混在しているアメリカの歴史は、マジョリティとマイノリティーの闘いの歴史でもあります。そう思うと、極力差別が生まれないように配慮した今の履歴書は歴史によって作られたとも考えられます。
履歴書は求職者本人だけでなく、その国の歴史と文化をも反映する写し鏡ということですね。皆さんも興味のある国の履歴書を眺めてみてはどうでしょうか。
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